うぐいす 2

リナの出番がなかったのでもういっこ(笑)柳がちょっとだけしゃべります

「すみません．進行席はこちらでしょうか？」

　進行席にとどまっていた雲雀にひとりの女子生徒が声をかけた．カラメル色の髪がふわふわしていて小動物のようだ．

「九条リナかい？」

「はい．あの，出直しましょうか…？」

　雲雀の後ろで忙しそうに指示を出す雅を見たリナがためらいがちに申し出る．しかし，雲雀は遠慮なく雅を呼びつけた．

「雅」

「何？面倒な話なら後で聞くから追い返して」

「九条リナ．君が呼び出したんでしょ」

　呆れたような雲雀の言葉に雅が勢いよく振り向いた．先ほどの不機嫌な声からは想像がつかないほど満面の笑みを浮かべている．

「ごめんね，騒がしくて．私は風紀委員で女子寮長の月城雅．エリさんから聞いてる？」

「あ，はい！じゃああなたが奏さんの？」

「そーゆーこと．でね，ちゃんと部屋を用意してたんだけど使えなくなったのよ．だから私の部屋でいいかな？」

　テンポよく会話を進めながら雅は手元の書類を片付けていく．その上機嫌な姿を呆れたように見ていた雲雀が口をはさんだ．

「あのフロアにまた草食動物を増やすの」

「可愛いからいいでしょ？」

「好きにしなよ．僕は戻る」

　学ランを翻して体育館を去る雲雀を待機していた草壁が追う．入れ違いに生徒会への指示を終えた幸村が柳を伴って戻ってきた．

「また恭弥を怒らせたの？」

「別に怒ってないわよ．恭弥のあれは人見知りみたいなものだし」

「あの，いいんですか？もともと無理を言って用意してもらった部屋ですし，実家から通うことだって…」

「いいのよ．それにあなたのことはエリさんに頼まれてるの．さて，行きましょうか」

　有無を言わせぬ笑みを向けて雅は出口へと進み始めた．とまどいながら後を追うリナに後ろから静かな声がかけられる．

「気にするな．雲雀なら雅が後でフォローに行く確立95％だ」

　リナが不思議そうに振り返ると雅が互いの紹介を始めた．

「会長の幸村精市と副会長の柳蓮二．蓮二はよく確率とか言うけど気にしなくていいから．で，この子が九条リナ．可愛いでしょ？」

「そうだね．初めまして，会長の幸村です」

「副会長の柳だ．よろしく」

「九条リナです．よろしくお願いします」

　生徒会のツートップから挨拶をされたリナは少し慌てながら挨拶を返す．

「それからさっき応対してたのが風紀委員長の雲雀恭弥，側近のリーゼントが草壁哲矢．てゆーか幸と恭弥の説明はいらなかったね」

「いえ，ありがとうございます．入寮手続とかいろいろすみませんでした」

「他でもないエリさんの頼みだもの．あなた，顔はよく似てるけど性格はエリさんより穏やかなのね」

「雅，君まさか会ったことないのに可愛いって言ってたのかい？」

　雅とリナの会話に幸村が疑問をはさむ．雅は入寮手続や部屋の調整を行っていた頃から「可愛い子が入ってくる」と言っていたのだ．

「実際可愛いんだから問題ないでしょ？」

「雅さんは母さんに似てますね．話し方とか振る舞いとか」

「うちの母さんもそう言ってたわ．私たちは中身が逆だって」

　ふたりは初対面だが親同士の交流があるらしい．事情をしらない幸村たちは完全に放置されている．

「家の話はまた後でね．幸と蓮二は先に戻ってて．私は女子寮の方で最終確認してくるから」

　話しているうちに寮の敷地へ入っていたらしい．目の前に３つの建物が見える．

「オリエンテーションの方はこっちでやっておくよ．じゃあ後でね」

「お願いするわ．リナは荷物もあるし一緒に来てね」

　そう言って幸村と柳は中央の建物へ，雅とリナは左の建物へ向かった．