カルタ大会 ３

カルタ大会ラストです．ちゃんと３つで終わってくれました(笑)

「じゃあ時間もったいないし，一球勝負な？」

「わかりました．ほな，サーブどうぞ」

　ボールとラケットを調達した2人がコートに入ると，すでに試合を終えた準レギュラー達が集まってきた．氷帝の天才と呼ばれる忍足との一球勝負．そんな状況を作り出した上野はいつも通り飄々としている．

「いつでもどうぞ」

「んじゃ遠慮なくっ！」

　そう言って勢いよく打たれたサーブはそれなりのスピードで忍足のコートに入った．素人だと思っていたギャラリーが呆気にとられる．

「あの先輩，素人じゃないんすか？」

「会長に教えてもらったって聞いてるけど…？」

「じゃあやっぱり素人…？」

　向日と中川が疑問形で会話をしている間も，コートでは凄まじいラリーの応酬が続いている．隣のコートで試合をしていた宍戸たちも手を止めて見入っている．

「一球勝負なのに時間かけてちゃ意味ないよな？」

「うわっ！」

　いきなりラリーのテンポを崩して上野がスマッシュを打ち，それまでとは比べ物にならない打球が忍足のラケットをはじく．体制をくずした隙に再びスマッシュが決まり，一球勝負は幕を閉じた．

「破滅へのロンド．だから頑張れよって言っただろ？」

 

「俺様の技を…！？」

「派手な技やりたいって言うから教えてみた．そしたらできちゃったんだよなぁ」

　微妙にショックを受けている跡部に響はのんびりと答える．上野の技術に関してツッコミをいれる人間はいないらしい．

「お取り込み中失礼します．跡見・日吉ペアがゴールしたようです」

「コートの方もジローちゃんが教えちゃったみたいだし，私たちも移動しましょうか」

 

　千鶴の報告通りゴールであるサロンにたどり着いた跡見・日吉ペア．ドアを開けるなり抱きついてきたのは正宗だった．

「ひよひよー！とみとみー！」

「随分早かったんですね，皇海さん」

「私と正宗はちょっと特別だったみたい．もうすぐみんな来るから座ってて」

　窓際のテーブルで何かを片付けていた雅に促され，お茶菓子で埋め尽くされたテーブルにつく．

「みや姉，妙なミッションで怪我とかしてませんか？」

「ミッションはお茶会の準備だけ．それで『ケーキ食べ放題＆２位以下の特典決定権』って響くんも鈴音も甘いよねぇ」

「あの二人が甘いのは雅さんと皇海さんだけですよ」

　そんな会話をしているうちにコートに集まっていたメンバーと主催の４人が現れた．

「あれだけやったのに一球勝負に負けた…」

「パイルミラージュって横から見てもわかんないんだよね～」

「元気出してください，宍戸さん！」

　ジローが上野にゴールを教えたことでへこむ宍戸と慰める鳳．さらに追い打ちをかけるジローの天然は誰も止めない．

「正宗も雅もおまたせー！結果は説明しなくても大丈夫よね？」

「うん，透先輩がカッコよく決めたところまでちゃんとモニターしてたから」

　窓際で片付けていたのはモニターだったらしい．雅が一球勝負を見ていたことを知って忍足が思わず後ずさる．

「じゃあカルタを集めてきた４人の特典を発表します．跡見くんとゆう先輩には鈴音と響くんから『お役立ち情報』，ひよくんには正宗から『七不思議情報』プレゼント」

　深く考えなければ可愛らしい特典だが，彼らの情報は確実に氷帝学園を揺るがしかねないほど危険なものだ．日吉の特典は単純に好きなものを考えた結果だろう．

「透先輩だけどうしても思いつかなかったんです．順番的に残ってるのは私なんですけど，何がいいですか？」

「んー，何でもいいの？」

「私にかなえられる事なら何でもいいですよ」

　珍しく幼い笑みを浮かべる雅にとびっきりの笑顔を向けて上野はひとつの提案をする．

「じゃあ俺とデートしよっか」

「「はぁ！？」」

「響くん驚きすぎ．忍足はうるさい．あぁ，特別メニューはちゃんと用意してあげるわよ？」

　雅に笑顔で特別メニューを宣告された忍足は正宗に癒しを求めてふらふらと離れていった．響は爆弾を投下した上野に詰め寄っている．

「あのな，お前は俺の親友だぞ？そんなやつとデートさせるなんて絶対いやだ！」

「日程は透先輩に合わせますから，また連絡くださいね」

「いーやーだー！」