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Katze's Spuren

                  色んなものが好き勝手に並ぶ空華のブログです. カテゴリから選択して閲覧することをオススメします. 作品は版権元や関係者様と全く関係ありません.
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Treat or Treat!

氷姫の雅ちゃんと透くんのハローウィーンです!日付ねつ造,かつ無駄に甘いです(笑)
デート編の伏線にしたので,頑張ってデート書きます…


「Treat or Treat!」
 廊下を歩いている途中,聞きなれた声で飛んできたのは発音の良い英語だった.
「えぇと…」
「なんだよ,ノリ悪いなぁ.今日はハローウィーンだぞ?」
 少し困った顔で振り返ると響を連れた上野が楽しそうな笑顔で立っていた.言いたいことはわかるが何かがおかしい.
「それは知ってますけど,合言葉間違ってません?」
「透の場合はそれが正解だよ.俺ならTrick or Trickだけど」
「言わないでくださいね!?」
「言わないよ,ハローウィーンにはそんなに興味がないんだ」
 説明する気のない上野に変わって響が答える.基本的にイベント好きの彼だが,そういう事もあるらしい.
「なぁ,ゆうー.お菓子持ってねぇの?」
「うわっ!お菓子なんて持ってませんよぉ」
「おーかーしー」
 いつまでたってもお菓子をくれない中川に上野が後ろから抱きつく.
 何とか逃げようとする中川だが,体格差のせいで引きずることしかできない.

「会長,上野先輩ってこんなキャラでしたっけ…?」
「透はお菓子に目が無いんだ.コーヒーはブラックなのにな」
「ブラックコーヒーは何となくわかりますけど,甘党って意外です…」
「甘党ってのは“酒より甘い菓子類が好きな人”って意味なんだぞー.ちなみに辛党はその逆」
 引きずられたままの状態で上野が捕捉をいれる.
 廊下の真ん中でそんなことをしている生徒会メンバーに注目が集まっているが本人はちっとも気にしていない.

「知らなかったです!お酒とお菓子の対比なんだぁ」
「よし,豆知識も教えてやったしお菓子くれるだろ?」
「ですから持ってませんってば!」
 やはり遊ばれている中川と上野のやりとりは響が昼休みの終わりを告げるまで続いていた.
 
「あの,なんですか?あれ」
「お菓子ボックスよ.バレンタインの時に見たでしょう?」
 放課後になり生徒会室へ向かうと,ドアの横に巨大なクーラーボックスが出現していた.
 すでに来ていた千鶴は何でもないといった様子で普通に答える.

「バレンタインの時にチョコ受付係みたいになってなのは知ってます.でも,何で今日こんな風になってるんです?」
「応対するのが面倒になったから出したの.上野君とあなた宛てよ?」
「えぇ!?」
 どうやら昼休みのやり取りを見ていた生徒たちがお菓子を持って来てくれたらしい.だが,もちろん中川にそんな自覚はない.
「おぉ,大量じゃん!な?ゆうを巻き込んだら絶対増えると思ったんだ」
「まったくお前は…こんなことなら,気をきかしてやるんじゃなかった」
「んー?何か言ったか?」
 お菓子ボックスを部屋に持ち込み,嬉々として物色している上野は響の話をほとんど聞いていない.
 唖然としていた中川だが,お菓子は好きらしく一緒に掘り返している.

「何でもない.お前なんかお菓子で溺れてしまえ」
 拗ねたようにぼやく響に首を傾げながら,上野は再びお菓子の選別を始めた.
 
「(さて,ゆうも帰っちゃったし一人寂しく帰るか)」
 お菓子の片づけを終えた上野は一人で正門の方へ歩いていた.
 日持ちするものはお茶菓子に,生ものはほとんど4人で分けて余った分は上野の土産となっている.
「(響と神谷の邪魔しちゃ悪いし…ん?)」
 のんびりと歩いている上野の視界に中等部の制服が映る.彼にとっては見慣れた,しかし居場所としては不自然な彼女.
「雅ちゃん!」
「お疲れ様です,透先輩」
 思わず駆け寄って名前を呼ぶと雅はにっこりと笑い返して向き直った.少し平べったい箱を大事そうに抱えている.
「こんなとこでどうしたの?響に用事なら生徒会室まで来ればいいのに」
「今日は透先輩に会いに来たからいいんですよ」
 どこか楽しそうな雅は首を傾げる上野に箱を差し出してゆっくりと開ける.
 そこにあったのはジャック・オ・ランタンの形をしたパンプキンパイ.

「Happy Halloween!でしたっけ」
「俺に…?」
「響君が透先輩は甘いものが好きだって教えてくれたんです.だから,作ってきちゃいました」
 にこにこと笑って上野を見上げる雅.その幼さを残した笑顔が上野の心に何かを響かせる.
「…帰ってすぐ食べて連絡する」
「そんなに急がなくてもいいですよ?食後のデザートにでもしてください」
「あぁ,うん.じゃあ,そうするよ」
 響の妹.出会ってからずっと慕ってくれる可愛い後輩.だが,上野にとって本当はそれ以上に大切な存在だったらしい.
「(はぁ…俺って馬鹿じゃねぇの?)」
 感情に気づくと同時に遅すぎることも気づいてしまった.彼女はもう気持ちの整理をつけているのに.
「どうかしましたか?」
「ううん.ありがとう,雅ちゃん」
 無意識に表情が曇ってしまったらしい.不安そうな顔をする雅に微笑んで髪をなでる.
「お礼は今度するとして,今日はとりあえず一緒に帰ろうか」
「はい!」
 可愛くて芯が強くて,いつだって憧れを映して見てくれる女の子.叶わないけれど,特別なのは変わらない.
「(卒業までにデートとかしたいなぁ…)」
 上野の願いが叶うのは年が明けた冬の事だった.
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