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Katze's Spuren

                  色んなものが好き勝手に並ぶ空華のブログです. カテゴリから選択して閲覧することをオススメします. 作品は版権元や関係者様と全く関係ありません.
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愛おしき共犯者 04

必ず「愛おしき共犯者 00」をお読みください.

倒れた光を家に運んだ謙也くん.


 財前からの電話を取ってすぐ,謙也はタクシーを捕まえて銀行近くの地下街へ向かった.電話をかけた段階で意識が飛んだらしく,後ろに聞こえるアナウンスから場所を特定できなければ危なかったかもしれない.
「ん…謙也さん?」
「目覚めたん?…発作,酷なっとるやろ」
「気にするほどやあらへん.謙也さんは?」
 目が覚めて最初に見えたのが自宅の天井と謙也だったことで安心したのか,財前は気だるげ答える.
「俺は,大丈夫」
「また,しょーもないこと考えてません?」
「…しょうもなくないやろ」
 財前が謙也を心配する言葉に他意はない.けれど,財前の発作が起こるたびに謙也は負い目を感じている.彼が毒ガスを吸ったのは,きっと自分のせいだから.
「これはアンタのせいやない.まぁ確かに溺れた謙也さんは笑えますけど」
「笑いごとかい」
「えぇんですよ,笑いごとで.うなされる謙也さんの方が俺は心配ですから」
 慈しむように頬をなでる財前の指は昔と変わらず冷たい.触れる場所から奪われる熱が彼の温もりとなる瞬間が好きだと言ったら同じように笑うのだろうか.
「まぁそれももうすぐ終わりますよ.明日,最後の生き残りを片付けますから」
「…っ」
 穏やかな空気が一瞬で張り詰める.最後の生き残り,それは財前の上司だと聞いている.そして毒ガスの情報を知っている最有力候補であるとも.
「俺は,光がおってくれたらえぇ.やからもう…んっ」
「相変わらず甘いなぁ….寝なおしますわ,明日に備えて.おやすみ,謙也さん」
「…おやすみ」
 言葉通り,財前は静かに目を閉じる.間もなく聞こえてきた寝息は穏やかで,謙也はどうしようもない気持ちになった.
 甘いと言って塞いだのは唇.けれど,本当に塞ぎたかったのは説教じみた謙也の言葉だろう.
「(何が正しいとか俺にはわからん.けど,このままでえぇはずないねん)」
 光を救いたい.その思いを胸に謙也はひとつの決意をする.

「もしもし.あの,身代金事件のことでお話したいことが…」
 握りしめた携帯電話は,終焉へのナンバーを刻んでいた.
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