Katze's Spuren
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だいすき
戒都さんハピバ!ってことで,愛され白石とか書いてみました.
一応,謙蔵です.光ちゃんと金ちゃんは子供ポジション(ぇ)
サイトの方にも後でupしますので,読みにくい方はそっちからどうぞ.
ごめん,空華の謙蔵はこれが限界だったよ…(笑)
「なぁ光,白石はワイのこと嫌いになったんかなぁ…」
「は?いきなりどないしてん」
元気が取り柄のゴンタクレがいつになく真剣な表情をして,そんなことを言い出した.寂しそうな視線の先にいるのは白石部長と謙也さん.ふたりが一緒にいるのはいつものことなのに,今更どうしたと言うのか.
「ワイな,一週間くらい白石に怒られてないねん」
「えぇやん.つーか快挙やな」
「せやけど構ってもくれへんのや.試合しよて言うても謙也が邪魔しにくるし」
「謙也さんが?」
基本的に仲間好きなあの二人が遠山を嫌いになるわけはない.しかも謙也さんが遠山の楽しみを邪魔するなんて,さらに意味がわからない.
「白石に言うとんのに,謙也が代わりにやったるわって来んねん.白石も謙也とやりやって言うし…」
「ふうん」
なんとなく理由がわかった気もするが確信は持てない.とりあえず可哀そうなくらいヘコんでいる遠山の頭を適当に撫でてやると不安そうな顔をして見上げてくる.小学校が同じコイツはどうしても邪険にできないから困まったものだ.
「遠山,謙也さんと勝負せぇへん?」
「勝負?」
「せや.勝ったら部長独り占め」
「やる!テニスか!?」
まだまだ幼い瞳をキラキラさせて臨戦態勢にはいる遠山.このまま謙也さんの所へ向かわせたら確実にケガをさせてしまう.
「テニスは部長に怒られるかも知れんし,鬼ごっことかでえぇんちゃう」
「鬼ごっこかぁ,謙也速いやん」
「謙也さん鬼にして,お前が逃げたらえぇねん.得意やろ?」
「せやな!ワイはやるでー!」
いつもどおり元気になったゴンタクレを見て安堵するあたり,俺も相当こいつに甘いらしい.
「そういうことなんで,謙也さんは遠山追っかけてください」
「は?」
「部長は商品なんで俺が預かっときます」
「俺?」
金ちゃんを連れてやってきた財前がよくわからない勝負を持ちかけてきた.持ちかけるというより,決定事項を伝えに来ただけとも言うが.
「遠山,もう逃げてえぇで」
「よっしゃ白石独り占めやー!」
「はぁ!?ちょお待ち金ちゃん!」
賞品が俺というのはそういうことか.いきなり独り占め宣言をされた謙也は慌てて叫んでいる.
「そんな手にはのらんで!謙也のアホー!」
「くっ…財前!後でちゃんと説明せぇよ!」
「説明聞いてから追いかけや…」
「部長が絡んで冷静に説明聞けるほど,できた人とちゃいますよ」
微妙な正論を投げつけて逃げ始める金ちゃん.追いかける謙也に対してぼやいていると,財前が何とも言えない解説をしてきた.これではどちらが先輩だかわからない.
「ホンマにもう…それで?いきなりどないしてん」
「遠山が寂しい言うから知恵貸したったんです.部長が構ってくれへん言うてヘコんどりましたよ」
「うっ…そら悪いことしたなぁ」
こういうとき自分の不甲斐なさを実感する.部長としての務めは果たしているつもりだが,どうしても金ちゃんに対しては保護者のような気分になってしまう.
「具合悪いんやからしゃーないっすわ」
「…お前はエスパーか」
「まさか.ここ最近の部活を振り返っただけです.いつも以上に謙也さんが側に居ったでしょ」
そしてここにも手のかかる子供がひとり.財前は手間がかからない代わりに,聡過ぎて扱いに困る.まぁ可愛い後輩であることに違いはないのだが.
「謙也が大げさ過ぎるんや.ちょっと咳き込んだだけやのに」
「健康オタクのアンタが咳き込む時点で微熱くらいあったんちゃいます?今回は謙也さんの判断が正解っすわ」
「無関心なくせに,痛いトコばっかりついて来よって」
咳き込んだ俺を目敏く見つけた謙也は悉く俺のフォローに周っていた.上手く乗り切ったつもりだったが,この分だとレギュラーにはバレているだろう.
「あ,そしたら財前にも悪いことしたなぁ」
「何の話です?」
「謙也,ずっと俺のトコ居ったからダブルス練習くらいしかしてへんやん.お前は謙也に一番懐いとるし,寂しかったんちゃう?」
金ちゃんが寂しかったなら,財前も同じだろうと思って尋ねると微妙に呆れた顔をされた.不愉快というよりは,どこか拗ねたような表情は年相応で微笑ましい.
「まず,俺はそんな事で寂しいとか思いません.それから,謙也さんだけに懐いた覚えはありません」
「でもほら,お前俺のこと苦手やんか」
「…謙也さんとバカップルやるんはえぇですけど,あの人の鈍さまで似るとかやめてくれません?」
誰がバカップルだとツッコミを入れたいが,今は鈍いと言われたほうが問題だ.お人好し過ぎて鈍い謙也と同列にされては部長として立場が無い.
「ホンマにアンタは….しゃーないからはっきり言うたります.これでわからんかったら,流石にしばきますよ」
「うん…?」
「謙也さんと部長,二人揃って俺のもんになりません?」
「…へっ!?」
あまりの爆弾発言に間抜けな声を出してしまった.それが面白かったのか,財前にしては珍しく愉快そうに笑っている.
「何すか,その反応.あーおかしい.ま,そういうことっすわ」
「…俺って想像以上に愛されとんやなぁ」
「せやから鈍い言うんですよ.さて,そろそろゴンタクレ止めてくださいね.声張るんめんどいんで」
素直じゃない後輩に元気すぎるゴンタクレ.俺は思っていた以上に幸せものらしい.
「金ちゃーん!戻って来ぃやー!」
「白石が呼んどる!なんやー!?」
「速っ!!!」
必死で追いかけていた金ちゃんは白石の一声でさらにスピードを上げ,一瞬後には白石に抱きついていた.さすがのスピードスターもあれには追いつけない.
「お疲れ様っすわぁ」
「お疲れ様ってお前なぁ….結局なんやったん?」
「可愛い後輩のちょっとした悪戯?」
「疑問形かい!」
金ちゃんと入れ違いにのんびりとやってきた財前は,どことなく楽しそうに見える.本人は無自覚らしいが,機嫌のいい財前はわかりやすい.
「あえて言うなら部長のこと独占しすぎっちゅー話ですわ」
「なんや,それやったらもうちょい鬼ごっこしといたら良かったな」
「…こういう時は部長より鋭いですよね,謙也さん」
なんだかんだ言って財前は白石のことが好きだ.本人に言ったら怒られるが,金ちゃんと財前は白石に対する感情が似ている.
「白石は変なトコで鈍いからなぁ.そういやさっき白石が変な声だしとったけど何か言うたん?」
「二人揃って俺のもんになりません?って言いました」
「セットなん?」
「セットです」
しれっとした態度で応えているが,微妙に綻ぶ口元を指摘してやりたい.本当にこういうところが可愛くて仕方ないのだ,この後輩は.
「別にえぇけど二人を独り占めって贅沢やな」
「遠山とふたり占めでもえぇっすよ」
「なんやそれ.ほな,あっちの二人と合流して帰りに何か食いに行こか」
微笑ましい悪戯を仕掛けてくれた後輩ふたりに奢ってやるのも悪くない.たこ焼きにするか白玉ぜんざいにするかでもめるだろうけど,それすら幸せな日常だと思えるから.
「(知恵貸したったんやから,白玉ぜんざいや!)」
「(いーやーや!今日もたこ焼きがえぇ!)」
「(白石はどっちがえぇ?)」
「(俺はどっちでもえぇけど,どっちか片方っちゅーのもなぁ)」
「(せやなぁ.あ,今日のおやつ何やっけ?)」
「(ん?今日はたこ焼き…あ)」
「(おやつにたこ焼き,帰りに白玉ぜんざい.まぁ今日くらいはえぇんちゃう?)」
「(しゃーないなぁ.金ちゃん,財前!どっちも食べさしたるからケンカせぇへんの!)」
「(ホンマ,平和やなぁ)」