Katze's Spuren
色んなものが好き勝手に並ぶ空華のブログです.
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愛おしき共犯者 01
必ず「愛おしき共犯者00」をお読みください.
今回は光の過去語り.場面は身代金のくだりです.
今回は光の過去語り.場面は身代金のくだりです.
「どうです?目の前で家族を奪われる気分は」
胸から血を流して横たわる娘.それにすがりつく父親.財前はそれを無感動な瞳に映して淡々と問いかける.
「少し,昔話でもしましょうか.16年前,とある島で毒ガスの漏出事故がありました.普通の人間は知りませんけど,あんたは知ってますよね?」
娘を殺されたことで動揺していた父親の顔が別の恐怖で青ざめていく.
「その毒ガスっちゅうのが厄介な代物で.国が米軍と秘密裏に開発しとったもんやから証拠隠滅が必要になったんです.
ガスを吸って死んでいく人間.逃げようとして撃ち殺される人間.さんざん殺したあげく居住区域はすべて燃やされました.
生き残ったんは本土におったあんたら数人と,必死で逃れた子供がふたり」
すっかり血の気が失せた顔で,まるで死人にでも出くわしたように目を見開く父親.どうやら自分が狙われた理由と,財前の存在に納得がいったらしい.
「そんな,まさか…全員死んだと聞かされたのに」
「そらまぁ,あれだけやって子供が本土に逃げたとか思わへんでしょ.勘のえぇ人やったら気づき始めとるかも知れませんけど」
「…っ!まさか,ここ最近の事件は全部おまえが…!」
そう,本土にいて生き残った数人も残すところ目の前の男を含めてふたりしかいない.すべて財前が自らの手で葬ってきたから.
「そうですよ.やって腹立つやないですか.俺たちは悪夢を背負って必死で生きとんのに,あんたらは国と取引して地位と居場所を与えられて.
せやから聞いたんですよ.目の前で家族を奪われる気分は?って.どっちから殺すか悩んだけど,何も知らん娘を残したところでおもんないし」
丁寧な説明を加えながら,弄んでいた銃口を再び父親の額に向ける.身の危険を改めて感じた父親は無様に命乞いを始めた.
「許してくれ!取引に応じるしかなかったんだ!たとえ家族を見捨てることになっても,ああするしか…!」
「そうっすね.わかりますよ,俺にも」
必死な父親の言い分をあっさりと認める財前.しかし,その銃口がそれることはない.
「たとえ大事な人が哀しむとしても,こうするしかないんやから」
-パンッー
ほんの小さな銃弾であっけなく散る命.先ほどまでの高揚感も最後の瞬間で一気に冷める.
「しょーもな」
はき捨てるように呟いて,財前は痩躯を翻した.銀行員としての後片付けと帰りの算段を始めたところで真っ黒な瞳が愛おしげに細められる.
哀しげな瞳で,それでも財前を待っている彼.彼を思うその時だけが本当に満たされていると財前は気付かない.
「もうすぐ帰りますよ,謙也さん」
優しく囁いて財前は明るい表通りへと足を向けた.
胸から血を流して横たわる娘.それにすがりつく父親.財前はそれを無感動な瞳に映して淡々と問いかける.
「少し,昔話でもしましょうか.16年前,とある島で毒ガスの漏出事故がありました.普通の人間は知りませんけど,あんたは知ってますよね?」
娘を殺されたことで動揺していた父親の顔が別の恐怖で青ざめていく.
「その毒ガスっちゅうのが厄介な代物で.国が米軍と秘密裏に開発しとったもんやから証拠隠滅が必要になったんです.
ガスを吸って死んでいく人間.逃げようとして撃ち殺される人間.さんざん殺したあげく居住区域はすべて燃やされました.
生き残ったんは本土におったあんたら数人と,必死で逃れた子供がふたり」
すっかり血の気が失せた顔で,まるで死人にでも出くわしたように目を見開く父親.どうやら自分が狙われた理由と,財前の存在に納得がいったらしい.
「そんな,まさか…全員死んだと聞かされたのに」
「そらまぁ,あれだけやって子供が本土に逃げたとか思わへんでしょ.勘のえぇ人やったら気づき始めとるかも知れませんけど」
「…っ!まさか,ここ最近の事件は全部おまえが…!」
そう,本土にいて生き残った数人も残すところ目の前の男を含めてふたりしかいない.すべて財前が自らの手で葬ってきたから.
「そうですよ.やって腹立つやないですか.俺たちは悪夢を背負って必死で生きとんのに,あんたらは国と取引して地位と居場所を与えられて.
せやから聞いたんですよ.目の前で家族を奪われる気分は?って.どっちから殺すか悩んだけど,何も知らん娘を残したところでおもんないし」
丁寧な説明を加えながら,弄んでいた銃口を再び父親の額に向ける.身の危険を改めて感じた父親は無様に命乞いを始めた.
「許してくれ!取引に応じるしかなかったんだ!たとえ家族を見捨てることになっても,ああするしか…!」
「そうっすね.わかりますよ,俺にも」
必死な父親の言い分をあっさりと認める財前.しかし,その銃口がそれることはない.
「たとえ大事な人が哀しむとしても,こうするしかないんやから」
-パンッー
ほんの小さな銃弾であっけなく散る命.先ほどまでの高揚感も最後の瞬間で一気に冷める.
「しょーもな」
はき捨てるように呟いて,財前は痩躯を翻した.銀行員としての後片付けと帰りの算段を始めたところで真っ黒な瞳が愛おしげに細められる.
哀しげな瞳で,それでも財前を待っている彼.彼を思うその時だけが本当に満たされていると財前は気付かない.
「もうすぐ帰りますよ,謙也さん」
優しく囁いて財前は明るい表通りへと足を向けた.
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